日本中がWカップサッカーで大騒ぎである。
 今朝(6月13日)早く、人並みにブラジル×クロアチア戦は生中継を見たが、格別の感慨はなかった。先制したクロアチアに勝たせてやりたかったと思うが、その話は置いておいて。
 へそ曲りの私は、こういう時だからこそプロ野球の話を書く。
 世の中がわあわあ言い始めたら、反対方向を向くのがへそ曲りの習性であるので、ハヤリ物はスイーツでもファッションでも髪形でも、世の中でみんなが追いかけるものに追随はしない。それどころか、ハヤリ物の菓子やパン、例えば古くはメロンパン、ラスク、近くはマカロンなどを買う行列ができていると、私は遠巻きにして近寄らない。何で世の中の人は付和雷同が好きなのか全く理解できないのである。大体、ラスクなんか終戦後に駄菓子扱いされた不味いものの代表であるのに、若い人は知らないので宣伝につられて買うのだ。バカか。
 さて、田中マー君と斎藤祐樹ハンカチ王子が甲子園の高校野球で闘った時、私はテレビ中継を見ていた。最後のバッターとして田中将大選手がバッターボックスに立って、見事な空振りをしてゲームセット。あの時点では、断然斎藤くんの方がスターだった。甘い美男子で、野球選手としては華奢、何となく母性愛をくすぐられる魅力のある青年だった。
 斎藤くんは早稲田大学に進学し、6大学野球のスターとして話題を集めた。マー君は高卒ルーキーとしてプロ野球人生に入った。この時点でも斎藤くんの方が世間の注目を集めていたと思う。
 例の「持っている」発言で、まだまだ斎藤くんは流行語の発信源にもなり、卒業時のドラフト会議でも、評価は高かった。東京6大学野球では、確実に斎藤くんはスターであり将来を嘱望されてもいた。
 もっとも、6大学野球はあくまでも学生野球である。プロとは違うレベルだ。古い話だが、6大学野球の大スターだった当時の立教大学の長嶋茂雄が、プロに入って初めての時、国鉄のエースだった金田正一投手に連続三振をくらい、バットに球がかすりもしなかった話を聞いている。高卒の金田が敵愾心まんまんで、「このやろ、プロの実力を見せてやる!」と内心思って投げたのに違いないと私は推測したが、本当かどうかはわからない。
 斎藤くんのことだが、今、ハンカチ王子と言っても、咄嗟にピンとこない人までいる。パ・リーグ・日ハムの選手として赫々たる成果を出しているどころか、千葉の方で2軍生活をしていると伝えられている。
 田中マー君とハンカチ王子の世評が逆転したのは何時ごろだったろうか。間違っているかもしれないが、昭和30年代からの年期の入ったプロ野球フアンの私の感覚では、楽天監督だった野村克也さんが、試合の後でのっそりと会見コーナーに現われて、ボソッと、「マー君、神の子、不思議な子」と七五調で絶賛した頃からではなかったかと思う。
 だが、私はあの時点でもあまりマー君の実力を信用していなかった。というより、連勝連勝に対して眉唾で、パ・リーグだからだとか、先発の相手投手運がいいからだとか、マー君の実力だけではないと冷ややかに見ていたのである。それがどうだ。今や大リーグ・ニューヨーク・ヤンキースのエースになりそうな勢いで10勝とは。大大びっくりである。大したもんだ。脱帽!
 さっさと里田まいちゃんと結婚して、悠々と渡米し、大きなお尻で大リーグのマウンドに立っている。しかも、彼はいつも自然体である。若者らしい興奮とか高揚とかと無縁なように、淡々としている。何故なのか。不思議だ。
 私は自分の20代を思い出すと、いつも試行錯誤の繰り返しで、自信がなくて、小耳にはさんだ他人の意見に右顧左眄し、不安だった。身体が弱かったことと関係はあるが、心臓に毛が生えた現在のように、自分の決定に絶対の確信はもてなかったので、常に悩みと隣り合わせだったことを思い出す。
 マー君はエライ。若い身空で悠々としている。ベター伴侶のまいちゃんの内助の功も大いに関係しているのだろうが、技術に絶対の自信があるからこその冷静さである。それと、ステージパパやママがあまり表面に現われない。高校から遊学して自立が早かったのだろうが、小さい時の家庭教育も彼の礼儀正しさを生んだと思う。
 マー君という可愛らしい愛称のお蔭で、彼を並みの肉体の選手としか思わなかったが、どっこい、大違い。身長が188センチもあるのだ。つまり190センチマイナス、たったの2センチ。大男なのだ。ダルビッシュ有くんは顔が小さいから背の高さが際立つが、デカ面のマー君は格別巨大と見えない。しかし、大リーグ中継を見ていると、外人選手より頭が高いことに気付く。肉体にも恵まれ、性格もよく、前途洋洋、後は怖いのは怪我だけだ。頑張っておくれ。
 さて、最後に斎藤ハンカチ王子くん。いい加減でプロ野球選手には見切りをつけた方がいい。優しい顔の通り、彼は肉体も優男で、顔の表情にアスリートらしい獰猛さがない。もちろん肉体のハンデがあって名選手になった人がいないわけではない。昔の阪神タイガースの吉田義男。華麗な球捌きで一世を風靡した。たった167センチの身長しかなかったが、「牛若丸」とニックネームがつけられた敏捷さでプロ野球選手として成功した。けれど、彼のような人は多くはない。6大学野球の万年ビリ大学、東大からプロに入った小林選手はさっさと選手を諦めて社員として順調に出世している。祐樹くんのようなハンサムはどこへ行っても好感度抜群だろうから、汗臭い野球選手から足を洗ったら?   
 すみません。オバサンの余計なお世話だったわネ。

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○麻生千晶(あそう ちあき)
作家。東京大学文学部フランス文学科卒業。
小説現代の「ビフテキとブラームス」で作家デビュー。主として中間小説を多数執筆する。後に映像批評に転じ、40年以上にわたって途切れずにテレビコラムを連載する。本籍・東京都、出生地・岡山県

〇批評コラムの主な連載媒体史

毎日新聞「火曜サロン」
サンデー毎日「TV or not TV」
アサヒ芸能「テレビ欄」
東京中日新聞「やじうまテレビ」
週刊現代「私のテレビ評」「男を叱る」
産経新聞「直言曲言」
ビジネスアイとサンケイエクスプレス「麻生千晶のメディア斬り」
週刊新潮「たかが、されどテレビ」
月刊TV navi「麻生千晶のテレビ評」ほか。

〇選考委員歴任史

ギャラクシー賞 テレビ部門、報道活動部門
民間放送連盟賞 テレビ部門 中央、東京、東北北海道、中国四国、中部、九州の各地区。
文化庁文部科学大臣選奨
芸術祭賞放送部門
読売テレビ ヤングシナリオ大賞
フジサンケイ広告大賞制作者賞
広告電通賞テレビ部門
ATP賞総務大臣賞
ザテレビジョンドラマアカデミー賞等、現在も選考委員複数媒体継続中。

○主な著作

「世紀末、どくぜつテレビ」(新潮社)
「美空ひばりは鶴だった」(扶桑社)
「麻生千晶のメディア斬り」(産経新聞出版)
「こころに響いた、あのひと言」(岩波書店、エッセイ収録)

テレビ映像、クラシック音楽、プロ野球、女性問題、社会批評など多岐にわたるテーマで辛口の発言をしている。活字のコメンテーターとしては他に新潮45、SAPIO、週刊新潮、週刊文春、週刊現代、週刊女性、アサヒ芸能、夕刊フジ、日刊ゲンダイ、などの媒体でコメント発言や原稿執筆をしている。